1. |
ジカンヒョウ
06:21
|
|||
【ジカンヒョウ】
あまりに簡単に
時間を考えすぎてしまったの
何億年先の星が
疑いもなく光っている
今はもう聴こえない
君の言葉は
笑い声だけ残して
色あせた
いつ
ドコデ
今は
午前
五時
すぎ
余白の多いホームで
老いてまだ
何かを待つ人
私は
私は待てなかった
ただ単純に月日だけをかさねていた
私は
明けるかどうかわからない朝であっても
何も想わない
午前
五時
二十二分
始発
見送る
明けかけた空に
かろうじて星はみえている
|
||||
2. |
墓標
02:53
|
|||
【墓標】
煙突はそこに立っていた
夜は星を背に
朝は雲を背に
夕は陽を背に
立っていた
煙は昼に吐かれたが
煤は風にまかれたが
今はもう終わってしまった
海底に突如現われた骨格が踏み付けられる残酷
誰も思い出さないことが
一番の悲しみ
|
||||
3. |
特別な日
04:07
|
|||
【特別な日】
いっぱい いっぱい 笑ったから
たくさん たくさん はしゃいだから
今日はゆっくりねむろう
今日はゆっくりねむれそう
いっぱい いっぱい お話ししたから
たくさん たくさん 君の瞳見たから
今日はいい夢見よう
今日はいい夢見れそう
僕はね そんなにうまく笑えないけど…
僕はね あまり涙を見せたくないけど…
いつも笑いますか
たまには泣きますか
いっぱい いっぱい 笑ったから
すこしだけ ほんの少しだけ 泣きたいと思います
|
||||
4. |
フウシャ
04:08
|
|||
【フウシャ】
セルロイドの風が
新緑を
知らせます
からっぽな僕の心は
ただからなだけで
何も受け入れる気には
なれないのです
昨日届いた手紙はまだ
開けられないままで
楽しかったよ 嬉しかったよなんて
とてもいえないのです
頬をなでる風が手招きしても
僕だけ取り残されたようで
ただ空が青いだけでは
今は喜べないのです
君と過ごした
日々が
とてもささいで
とてもすきでした
セルロイドの風が
窓辺に何かを知らせても
僕はまた吹き返すだけ
|
||||
5. |
立夏
04:01
|
|||
【立夏】
花筏浮かべて 渡って行く春
太陽はただ眩しいだけでなく
優しく照るのだろうか
今日の雨はまだ
僕を変えやしない
暦の上に夏が来て 終わってゆく春
目の前まで迫って果されなかった再会は
誰のためのものだったのだろう
今日の雨はまだ
僕らを変えやしない
あの山をこえてもう 風は吹かない
君の体温だけを頼りに今を生きてるのは
あまりに不自由なことだろうか
この雨が止んでも
僕は変わりゃしない
夏は僕を待ってないし
僕も夏を待ちやしない
ただ君の体温に溶かされてしまいたいだけ
|
||||
6. |
おやすみ
03:47
|
|||
【おやすみ】
さよならは おやすみのよう
また明日 会えそうな今日に おやすみ
またいつか 会えそうな人に おやすみ
なつかしい花の香りにつつまれた眠りの中へ
確かにやってくる眠りの中へ
これから いくつの さよならを
これから どれだけの おやすみを
僕らは口にするのだろう
|
||||
7. |
星の尾
03:41
|
|||
【星の尾】
ほつれた糸で吊された星々(ほしたち)が
一斉に糸を切った
その無数の星の輝きの行くはてより
残された糸
つながれていたその先
理由(わけ)を知る人の声がききたい
|
||||
8. |
どろどろの木
02:57
|
|||
【どろどろの木】
どろどろの木にはあらゆるものが引っ掛かります。
小さな虫 大きな惑星 水も風も
ささやかに咲いた花も、
わたしもときどき引き寄せられてしまう。
その引力に、
例えば大きなもののようにゆっくりと
例えば小さなもののように刹那に
この身を溶かされてしまいたい。
焼かれた犬を思い出しながら...。
熱くも寒くもないところで
わたしは生きていきたい。
人としてでなく、
|
||||
9. |
春方 -はるべ-
02:21
|
|||
【春方】
春方に君と腰かけて
いつかの夏を見ている
海開きの知らせが
ニュースに遅れてやってきた午後に
おばさんの笑顔があたりまえとなった夏
黙り込んだ寒さは
知らないうちに去っていったわけでなく
サイレンの音のようにくり返し 消えていった
春方に君と腰かけて
いつかの夏を
決してくり返さない夏を見ている
|
||||
10. |
街
03:52
|
|||
【街】
明日の天気を気にかけて
通りすがる街
真夏の午後なら夕立を予測し
太陽の一服に見上げる空
興味のあるのはそんなこと
あの子の不機嫌気にしながら
手を引く街
真夏の夜なら熱帯夜を予測し
下がらない体温のままみつめあう二人
どうにかしたいのはそんなこと
通りすがりの終焉の時
気に留めない言葉の多さに
街は今日もひっそりと
誰かのいなくなる準備をします
|
||||
11. |
冬の日
04:08
|
|||
【冬の日】
帰り道は学生たちでいっぱいで
この冬一番の寒さだというのに
笑顔もちらほらみかけます
出雲路橋(いずもじばし)の上で
誰かの邪魔をしないように
背中を小さくすぼめながら
川辺をいつかの風景とかさねます
「久しぶりだね」
「元気だった」
「どうしてた」
こんな冬の日が
大好きだっていったこと
君はもう覚えていないのかな
よく晴れたとても寒い日のことです
「久しぶりだね」
「元気だった」
「どうしてた」
ポケットに入れたままの手は
あの時と同じで
何度も何度も手を振ろうとしたけれど
人ごみで君を見失った時のことです
「お久しぶりです」
「お元気ですか」
「どうしてますか」
帰り道は学生たちでいっぱいで
この冬一番の寒さだというのに
笑顔もちらほらみかけます
|
||||
12. |
銀のスプーン
02:29
|
|||
【銀のスプーン】
銀のスプーンはわたしの夢を
ひとつすくってどこかへ隠した
銀のスプーンはわたしのこころを
浅く何度もそぎ取った
スープ皿の上には淡白な憧れだけが残った
|
Streaming and Download help
If you like IHONO, you may also like:
Bandcamp Daily your guide to the world of Bandcamp